表面エピタキシー

半導体結晶成長(エピタキシー)によりナノ表面上にさまざまな物質を形成します. 原子レベルでの制御を行い,ナノ構造(量子細線・ドット)や新しい結晶構造(ポリタイプ)を作り,それらの物性を測定します. それらが高性能次世代光・電子デバイスへ応用可能かどうか検討します.
表面エピタキシーによるポリタイプGaNの形成
SiCナノ表面のナノファセットへ核形成させ,ステップフロー成長させることでSiCポリタイプを引き継いだ6H-, 4H-GaNを形成します.
また,SiCステップからの横方向成長モードを実現する事で,(0001)面への貫通転移を減少させるなどの低欠陥化が期待できます.

  1. Ganポリタイプ制御
  2. Gan低欠陥化
  3. GaN量子ドット

  1. M. Ebihara et al., JJAP46, L348(2007).
グラフェン構造の形成
SiCナノ表面上にMBEやCVDによって炭素原子を供給することで,グラフェンナノ構造の作成とその物性評価を行っています.


① グラフェンナノリボンアレイ
SiCナノ表面の(0001)面(テラス面)に選択的にグラフェン成長させる事で,テラス幅に応じたグラフェンナノリボンが作成できます.
SiC(0001)-Si面ではグラフェンはSiCに対して30˚回転した方位でエピタキシャル成長するため,幅だけでなく, 結晶方位やエッジ方位の揃った単層のグラフェンナノリボンを成長させる事が出来ます. また,高密度(10nm間隔)に均一に成長するためRamanやARPESを用いた物性観察が可能です.
これまでに実際に10nm幅のグラフェンナノリボンを形成し,ARPESでバンドギャップを観察しています.

  1. T. Kajiwara, Y. Nakamori, A. Visikovskiy, T. Iimori, F. Komori, K. Nakatsuji, K. Mase, and S. Tanaka, Phys. Rev. B 87, 121407 (2013).
  2. Y. Hagihara, T. Kajiwara, A. Visikovskiy, and S. Tanaka, Appl. Phys. Express 6, 055102 (2013).


② グラフェンナノリップル
SiCナノ表面をテンプレートとして,表面熱分解法によってグラフェンを形成させると, 数十nm周期で曲率を持った,つづら折りのグラフェンが形成できます.
グラフェンへ,ナノメートルオーダーの周期的な曲率を与えることにより,電子状態などの物性に変調を与えることが期待されます.
また,(0001)面では6√3構造と呼ばれるバッファー層が形成しますが,ファセット面ではバッファー層が存在しないことが予想され, 界面の違いによりグラフェンに周期的なポテンシャルが付与されることも期待されます.
これまでに周期ポテンシャルの影響によって,テラスに垂直方向とテラスに平行方向でディラックコーンが変形している様子を観察しています.

  1. K. Nakatsuji, Y. Shibata, R. Niikura, F. Komori, K. Morita, and S. Tanaka, Phys. Rev. B 82, 045428 (2010).
  2. K. Nakatsuji, T. Yoshimura, F. Komori, K. Morita, and S. Tanaka, Phys. Rev. B 85, 195416 (2012).