核燃焼プラズマにおける核弾性散乱効果
近年の核融合研究の進展に伴う装置の大型化に伴い、より高いエネルギー粒子成分を含む核燃焼プラズマを対象とした研究の重要性が増しています。次世代核融合実験装置(ITER)では、1 MeVを超える中性粒子Beamの使用が想定されており、そのためのBeam入射装置の開発が進められています。高温プラズマ中では、イオン間の衝突としてCoulomb衝突が支配的ですが、イオンのエネルギーが高くなるに従い、イオン間の散乱断面積はCoulomb力を介した場合のもの(Rutherford断面積)とは異なってくることが実験的に明示されています。実験で測定される散乱断面積からRutherford散乱の寄与を除いた断面積を『核弾性散乱(NES: Nuclear Elascti Scattering)断面積』と定義しています。高エネルギーイオンを含む核燃焼プラズマの特性を正確に把握するためには、核弾性衝突の影響を正確に評価しておくことが重要です。
私共の研究グループでは、核融合反応で生成される高エネルギーイオンを対象として、核弾性衝突が核燃焼に及ぼす影響を調べてきました。近年,核融合科学研究所が所有する大型ヘリカル核融合実験装置(LHD)でその効果の一部を観測しています.将来の核融合プラズマにおける核弾性効果を明確にしようとしています。
Effect of nuclear elastic scattering on the D(d,n) 3He fusion reactivity induced by energetic protons observed in the Large Helical Device,
H.Matsuura, et al.,
Nuclear Fusion, Vol.61, 094001 (2021). [PDF File]
Observation of a nuclear-elastic-scattering effect caused by energetic protons on deuteron slowing-down beahvior on the Large Helical Device,
H.Matsuura, et al.,
Nuclear Fusion Vol.60, 066007 (2020). [PDF File]
核燃焼プラズマにおける核弾性散乱とその炉心特性への影響,
松浦秀明,他,
プラズマ・核融合学会誌, Vol.91, No.7, p.449 (2015). [PDF File]
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