放射線について (Q&A)

放射線について Q&A
 東日本大震災時の福島原発事故により原発周辺各地に放出された放射線能(線源)および、それによる被曝に関して、疑問、心配をお持ちの方が多いようです。放射線を正しく理解して頂くのは難しいのですが、以下簡単にQ&A集を作ってみました。お役立てれば幸いです。

Q0:放射能ってなんですか?
Q1:放射線ってなんですか?
Q2:放射(Radiation)とはどういう意味ですか?
Q3:放射線源とはなんですか?
Q4:光と放射線は同じものなのですか? 光も放射線なのですか?
Q5:エネルギーを運ぶ粒子とはなんですか?
Q6:放射線(エネルギー線)の種類とそれぞれの違いは?
Q7:放射線(エネルギー線)はどのように動くのですか?
Q8:放射線(エネルギー線)に被曝するとはどういうことですか?
Q9:ベクレル(放射線強度)グレイ(吸収線量)およびシーベルト(吸収線量当量)の違いは?
Q10:ミリシーベルト(mSv)の被曝は危険なのですか?
Q11:被曝した物質や生物体は放射能を持つようになるのですか?
Q12:内部被曝、外部被曝とはなんですか。どう違うのですか?
Q13:体に入り込んだ放射性物質はどうなるのですか?
 
このQ&Aはご覧いただいた方々からのコメントや更なるQでより分かりやすいものにしてきたいと思っています。ご質問、コメント、誤りやミスのご指摘はtanabe@nucl.kyuhsu-u.ac.jp
までご連絡いただけますようお願いいたします。

また、もう少し詳しい説明は、
別途、「放射線について(解説)」に記述しております。
高校の理科程度の知識が必要ですが、できるだけ正確な記述に努めています。このQ&Aでは不十分だと思われる場合は、是非ご参照ください。



Q0:放射能ってなんですか?
A0:文字通り放射線を放出する能力という意味ですが、現実には放射線を放出する物質のことを言う場合が多いです。その場合放射能を持った物質ということで放射性物質と言うのが正しい表現です。また放射能と言う言葉が、 放射線の代わりに使われている場合も多いようです。

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Q1:放射線ってなんですか?
A1:大きいエネルギーを持って動く原子サイズ以下の粒子またはのことです。それの持つエネルギーの大きさが、私たちの身の回りにある物質あるいは私たち自身を構成している粒子(原子や電子です)1個1個が持っているエネルギー(meV程度以下)より 4桁程度以上大きいエネルギー(keV以上)を持っている場合に放射線と呼びます。ですから、私たちは、放射線というより、エネルギー線と呼ぶ方が正しいと思っています。エネルギー(放射)線は1個1個数えられるものです。1秒間に1個の放射線を出す能力をもった物質(放射性物質)を1ベクレル(Bq)(Q9のA9参照)の放射能を持った物質と言います。

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Q2:放射(Radiation)とは?
A2:あらゆる物体は、絶対零度でない限り、温度に応じて、光(電磁波)を放出しています。これを放射(Radiation)といいます。理想的な放射を黒体放射といいます。放射される光の波長は温度が高いほど、短くなります。これを利用すると、物体の温度を、直接触れることなく、定めることが出来ます。サーモグラフィーといわれる、人間の体表温度を測る装置は、人間が放出する光(赤外線領域の光です)を測定していうのです。また空気が乾燥している冬場の夜間に地表の温度が「放射冷却」より空気温度より著しく下がってしまうのでは、地表からの赤外線の放射により、エネルギーが放出されてしまうためです。
 図は太陽から放出され地球に届く光の波長分布です。最も光の強度が高いのは、約0.5マイクロメータ(500ナノメータ)付近の波長をもった光で、これから、太陽の表面温度が5700℃程度であることがわかります。
 宇宙のはるか彼方、何億光年もの遠方にある星から地球に届く電磁波の波長分布を調べて、星の状態、表面温度や、内部の温度、何で出来ているか等を調べることができます。(参照:http://ja.wikipedia.org/wiki/電波天文学)
   


図A2 太陽からの放出され地球に届く光の波長分布(大気圏と地上とで比較すると、大気により、灰色部のように水や二酸化炭素による吸収があることがわかる)J. P. Peinuto and A. H. Oort, Physics of Climate, American Institute of Physics

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Q3:放射線源とはなんですか?
A3:放射の定義からいうと、あらゆる物体は電磁波を放出していますので、放射線源となります。太陽はもちろんです。 特に太陽を含め、恒星と呼ばれている星は、核反応によりエネルギーを放出し続けていますので、図A2には見られない、 0.2マイクロメータ より短い波長の光を放出しています。宇宙線は、このような恒星から放出される、あるいは星の爆発等より生じる、 様々な放射線なのです。通常放射線源という場合は、X線よりエネルギーの大きいエネルギー(放射)線(数keV)を放出するものを言います。

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Q4:光と放射線は同じものなのですか? 光も放射線なのですか?
A4:そうです。本来、放射線とは電磁波のことで、波長(λ)に反比例または周波数(ν)に比例するエネルギーE = 2πh/λ=hν(比例係数hはプランクの定数といいます)を運ぶ粒子なのです。各種の電磁波をそれの持つエネルギーの順に並べたのが図1です。無線やラジオ、テレビ等、で使われているものは電波と呼ばれ、それぞれ異なった波長の電磁波を使っていますが、いずれも、物理的には電磁波で、極めて小さいですがエネルギーを運んでいます。さらに波長を短くしていくと、電子レンジや電磁調理器に使っている、マイクロ波といわれる電磁波になります。波長に応じて、メートル(m)波、ミリ(mm)波、マイクロ(μm)波とそれぞれ3桁ずつ、区別しています。いわゆる赤外線は 1μm程度の波長領域の光です。0.7μmから0.2μm程度の波長領域が可視光になります。0.2μm(200nm)以下は目に見えない紫外線、さらにナノメーターより短い波長の電磁波がいわゆる放射線といわれるものになります。 放射線もそのエネルギーに応じて比較的エネルギーの低いX線、γ 線と区別しています。


図A4各種電磁波の波長とエネルギー(http://www.sugatsune.co.jp/technology/illumi-l.phpによる)

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Q5:エネルギーを運ぶ粒子とはなんですか?
A5:質量mを持つ粒子は、運動エネルギーE=mv2/2を持って速度vで運動しており、何かに衝突すれば、その運動エネルギーの一部または全部を相手に付与する、あるいは逆に衝突した相手からエネルギーを付与され(吸収し)ます。通常エネルギー線と呼ばれる粒子の持つエネルギーは、我々の身の回りの物質や我々自身を構成する原子が持っている運動エネルギーよりはるかに大きいので、エネルギー(放射)線に曝されるとエネルギーが付与されます。これが被曝と呼ばれる現象です。

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Q6:エネルギー線の種類とそれぞれの違いは?
A6:エネルギー(放射)線には、粒子としてエネルギーを運ぶα(アルファ)線、β(ベータ)線、光としてエネルギーを運ぶγ(ガンマ)線とに分けることができます。 図A6にそれぞれが物質に入った時にどのようにエネルギーを与えるかを示しています。a線は皮膚程度の厚さでそのエネルギーを全部付与して、止まってしまいます。 β線でも数10μmの厚さで止まってしまいますので、α線やβ線が対外から放射線として人に入射しても、あまり大きな影響はでません。放射線が強いと、やけどになります。 体の内部に入ると、内部被曝となり(Q12参照)危険です。一方γ線は透過能が高いので、図A6のように手ならば、突き抜けてしまいます。 もちろん突き抜ける間にエネルギーを付与しますので、被曝になるわけです。通常放射線被曝として問題にされるのは(もちろん福島でも)、このγ線による被曝です。
詳しくは、「放射線について(解説) 第3章 エネルギー線の物質への影響」をご覧ください。


図A6 α線、β線、γ線が物質に入射した時に物質に付与するエネルギー(軽い物質と重い物質とで異なる)

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Q7:放射線エネルギー線はどのように動くのですか?
A7:エネルギー線は、物質を構成する粒子(原子またはた電子)に衝突するまでは、まっすぐ走ります。 衝突とはエネルギーの受け渡しのことで、エネルギー線の場合は、エネルギーを付与するたびにその軌跡が変わります。(通常、付与するエネルギーが大きければ大きいほど軌跡の変化は大きいです。放射線は水や空気とは異なり、それが進んでいる方向に対して衝突しますが、回り込んで後ろから物質に衝突してくるようなことはありません。特にγ 線の場合はだんだん広がっていきますが、ほぼまっすぐ進むと考えてさしつかえありません。
詳しくは、「放射線について (解説)第2章 放射線源(エネルギー線源)について」をご覧ください。

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Q8:放射線(エネルギー線)に被曝するとはどういうことですか?
A8:飛来したエネルギー(放射)線が人間の体に飛び込んで、それの持っていたエネルギーを人間を構成する分子、原子、電子に に与える (エネルギー吸収またはエネルギー付与といいます)ことです。与えられたエネルギーはグレイ(gray、記号Gy)という単位で取り扱われます。1Gyとは1kg当たり1Joule(1ジュール=0.24カロリー)のエネルギーが付与または吸収されたことを意味します。(Q9のA9参照)

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Q9:ベクレル(放射線強度)グレイ(吸収線量)およびシーベルト(吸収線量当量)の違いは?
A9:ベクレル(Becquerel, 記号: Bq)とは通常エネルギー(放射)線源の強さを示す時に使う単位で 1 s(秒)間に1つの放射線を放出する物質は1Bqの放射能を持っているといいます。

グレイ(Gray、記号Gy)とはエネルギー(放射)線が物質に入射した時に、物質に吸収される(付与される)エネルギーを示す単位です。 吸収線量と呼ばれています。1Gyとは1kg当たり1 Joule(ジュール=0.24カロリー)のエネルギーが吸収されたことを意味します。

シーベルト(Sievert、記号:Sv)とは吸収線量当量と呼ばれているもので、放射線の種類によって、物質へのエネルギーの与え方が異なりますので、 吸収線量Gyを、γ線によるエネルギー吸収線量と等価になるように換算したものです。γ線による被曝の場合は1Gy=1Svとなります。報道等で通常、マイクロシーベルト(μSv = 10-6Sv)が使われていますが、これは、実際には単位時間当たりの吸収線量率(μSv/hour)です。エネルギー(放射)線に曝された時間を乗じて、積算線量率が20mSv以下(Q10参照)になるように規制されているのです。

ベクレルとシーベルトの換算:エネルギー(放射)線1個あたりどれだけのエネルギーを付与するかはわかりますので、エネルギー線の種類とそれの持つエネルギーが特定できますと、BqをSvに換算することは可能です。経口摂取されたヨウ素131を例にとってみますと、実効線量係数と言う値が2.2×10-8と定められておりますので、Bqにこの値をかけると、吸収線量当量Svが計算できます。
詳しくは「放射線について(解説) 第1章 放射線とは」をご覧ください。

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Q10:20ミリシーベルト(mSv)の被曝は危険なのですか?
A10:この質問が「一人の人が20mSvの被曝を受けた時、発癌しますか」と言うことであれば、「わかりません」と言う他はありません。また「どれくらい危険か」と問われれば「何と比べて危険か」の比較にならざるを得ません。20mSvの被曝で肺ガンになる確率は、常時喫煙者が痢癌する確率に 比べればはるかに低いと言えます。しかし、20mSvを被曝した場合、被曝しなかった人に比べ、甲状腺線癌になる確率は高くなるとは思われますが、 全く被爆しなかった場合と比べてどれだけ高くなるかを数字で示すことはほぼ不可能です。人間は、自然に存在する放射線のため、一人当たり年間平均2.4mSvを 被曝するとされています。この影響は全く不明です。また人間には治癒力が備わっており、その力は、個人個人また、その生活スタイルによって 健康状態が大きく異なります。20mSvの被曝とは、個人個人に影響が出るレベルではなく、何千人に一人とか二人に影響が出る確率でしか評価できないのです。 何千に一人二人の影響を調べるためには、何万、何百万人が20mSv程度の被曝を受けた影響を調べねばなりませんが、それだけ多人数の調査はできていません。 第2次世界大戦後、大国の大気中核実験により、放射性物質が撒き散らされ、その当時の放射線レベルは、現在のより10-100倍程度高かったと思われますが、その影響は不明です。 平均寿命の増加に伴う、癌発症率の増加が顕著で、それに比べると核実験で撒き散らされた放射性物質の影響は検知できない程度になっているものと思われます。(影響がなかったといえるわけではありません)。また日頃の生活スタイルが大きく影響しますので、20mSvの被曝の安全性を強調される方は、ストレス等による発癌や、 農薬等の影響の方がはるかに大きいと主張されますし、危険を強調される方は、(確率ではなく)絶対数で何人が被曝により発癌しているとおっしゃるかも知れません。
 もちろん被曝は出来るだけ低いにこしたことが良いのは論を待ちません。過去の被曝歴を消し去ることはできませんので、 ご自分の被曝レベルでは、健康には影響が出ないと信じて、心身共に健康な生活を送るようこころがけていただく他はありません。
詳しくは「放射線について(解説) 第4章 被曝低減または汚染と除染」をご覧ください。

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Q11:被曝した物質や生物体は放射能を持つようになるのですか?
A11:いいえ。放射能で汚された物体は放射能を持つようになると誤解されている方が、時々いらっしゃいますが、それは全くの誤解です。放射能で汚されると考えること自体が誤った考え方です。

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Q12:内部被曝、外部被曝とはなんですか。どう違うのですか?
A12:放射線源が体外にあり、これからのエネルギー線に被爆することを、外部被曝といいます。一方、線源(放射性同位元素がほとんどです)が 体内に経口摂取により取り込まれ、体内の臓器/器官に滞留すると、そこからエネルギー線が放出され、体内の臓器/器官が直接被曝します。これを内部被曝といいます。 ヨウ素(I)は甲状腺に取り込まれやすいので、放射性同位元素131Iが、甲状腺に取り込まれて、内部被曝により甲状腺癌が発症するのは、特に小児の放射線影響で、最も懸念されていることのひとつです。
詳しくは 「放射線について(解説) 第1章 放射線とは」をご覧ください。

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Q13:体に入り込んだ放射性物質はどうなるのですか?
A13:基本的には、食べ物の中に含まれているものと同じで、代謝によって排泄されます。半分にまで減少する時間を生物学的半減期といいます。表に主な放射性同位元素の生物学的半減期をまとめました。ヨウ素-131は、甲状腺に貯まりやすく、甲状腺癌を引き起こすことで恐れられていますが、取り込まれてから1年で約1/8になります。ストロンチウム-90では49.3年と非常に長くなっていますが、これはカルシウムと同じような化学的性質を持っているので骨に貯まり、一旦骨に組み込まれますと、なかなかとれないからです。体内に入り込んだこれらの放射性同位元素を早く排泄するには、これと同じ元素で、放射性を持たない安定同位体の摂取により、置換する方法が最も有効で、ヨウ素の場合はヨウ素剤と称される安定同位体であるヨウ素127を用いたヨウ化ナトリウムやヨウ化カリウムを錠剤にしたものを摂取することで、排泄を早めることが出来ます。ただしこれは、放射性ヨウ素が体内に入る前に摂取しておく方が、より有効です。

詳しくは「放射線について(解説) 第4章 被曝低減または汚染と除染」をご覧ください。


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